悠久のシャングリラ


「お、落ち着いてください。
最初ですから後ろから見ていましょうよ!」

そう訴えかけると、
涙目でキッと睨みつけられた。


「わかってない! あの化け物は、
人を食べようと襲うのよ!?
そんな相手、嫌に決まってるじゃない!」


桔梗は、ここに来てすぐ、
あの化け物に襲われている。

おそらくそれがトラウマとなって、
防衛反応が出ているのだろう。

かと言って、
一人置いていくこともできない。

この館で何が起こるかわからない以上、
迂闊に一人になるべきではないからだ。

と、藤が言っている。


「それでも、あたしは残る!
みんなで勝手に化け物でも何でも
退治していればいいでしょう!」


…………。

途方に暮れて、近くの二人を見やる。

彼らも同じように、
打つ手なしと言いたげな顔をしていた。

どう説得しようか、
全員で頭を悩ませていたーー。

< 20 / 306 >

この作品をシェア

pagetop