悠久のシャングリラ


「瑠璃! 私の手を離して!」

「…………え」

「早く!!」



聞き間違いかと思った。
それか、あたしの心を読まれたのかと。


咲夢梨は、
自分の状況を分かっているのだろうか。



あたしがこの手を離したらーー。



「咲夢梨!! 今助けるから!」


……また、隼人の声。



ーードクン。


そんな必死な顔で、声で、
咲夢梨のことなんか呼ばないで。


ーードクン。


咲夢梨だけじゃない、
あたしの事も、その目に映して。


ーードクン。




あたしの事を、
あたしの事だけを好きになってよ……。

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