悠久のシャングリラ
『……こっちへ。 もう大丈夫だよ』
あの女の人の声が、
今度ははっきりと耳に届いた。
私は、この声を知っているーー。
声は私を誘うように、
何度も何度も私に呼びかける。
『……こっち。 こっちまで来て。
……みんなを、帰してあげないと』
そう。
帰してあげないといけない。
きっと彼らはもう、
自分たちの足で立ち上がることが出来る。
私は重い腰を上げて、
のそのそと声の方へと歩き出した。
奥にあった扉は自然に開き、
私が通るのを待ってくれている。
その前で一度止まり、
みんなを振り返った。