悠久のシャングリラ


悲しい。




嬉しい。





寂しい。



色々の気持ちがせめぎあって、
心臓が早鐘を打っている。


『落ち着いて。 大丈夫、大丈夫だから』


そんなわけないのに、
ふわりと頭を撫でられた気がした。

涙は止まらない。
息も苦しくて、動きたくない。


「……ふ、ぅうっ……」


でも「大丈夫」と繰り返すその声に、
どこか既視感を覚えた。


……そうだ。


私が睡蓮の黒ずんだ腕を見た時、
「…大丈夫。 大丈夫だよ」と言って、
何度も撫で擦ってくれたーー

その優しい声と、似ているのだ。

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