悠久のシャングリラ


「ボクは瑠璃を許せない!
ボクには、あの子だけだったのに!!」

「だとしても! ……少し落ち着け。
ここで殺すことが最善なわけがない」


落ち着かせるように、
優しく諭すように告げる。


「そんなことしたら、
それこそ咲夢梨が悲しむだろう?」

「………」


獣のように血走った目をあたしに向けたまま、睡蓮は藤の言葉に一歩退いた。

納得してではなく、渋々で。
腕から伸びた黒い炎も収まらないまま。

静まり返った石の広場で、
今度は鳳仙が口を開いた。


「けど、今回ばっかりは隼人に同意。
殺すまではいかなくても、
この状況がわからないって何?」


鳳仙のこんな冷たい目、見たことがない。

瞳の奥には、怒りが滲み出ていた。

< 217 / 306 >

この作品をシェア

pagetop