悠久のシャングリラ
「む、娘さん! 大丈夫か?
……鈴蘭! いきなり何をしているんだ!」
「なにって……。 ただピンク色の頬に
唇を触れさせただけだろ?」
「それが駄目なんだ!」
「はぁ……」
「…………」
私を離した鈴蘭(すずらん)と
呼ばれた男の子は、
今度は桔梗の元へと歩み寄る。
それを横目で見届けながら、
もう一人へと視線を向けた。
「……………」
素知らぬ顔で、
一人壁の隅で分厚い本を読んでいる彼。
(そういえば、
一度も本から顔を上げてません……)
鈴蘭から距離を取り、
二人の顔を見比べる。