悠久のシャングリラ


(あっちの男の人が鈴蘭なら、
こっちの男の人は……)


白いジャケットに、黒に近いパンツ。

鈴蘭とはまた違った装いの服で、
言ってしまえば明眸皓歯だ。

伏せられた長い睫毛が印象的で。

整いすぎていて、
女の子と見間違えるほど綺麗だった。


(ん? 本当に男の子なのか知らない……)


もし女の子だったら、
とても失礼なことを考えていた。

話しかけたいけど、男ですか?女ですか?
って聞くのは失礼だし。

どうしようか迷っていると、
後ろから肩を叩かれた。

驚いて振り向くと、そこには鈴蘭がーー。


「……すごい勢いで、遠ざかったな」


部屋の中央から壁際。

その距離で私は鈴蘭に問いかけた。


「な、なんですか……?」

「え、もしかしてこの距離で話すのか?
……ちょっと警戒しすぎねぇ?」


ほんの少しだけ、一歩距離を詰める。


「もう一声!」


数歩進んで、
彼の手が届かない範囲で止まった。

ここからなら、大きな声を出さなくても
相手と話すことが出来る。

絶妙なナイス距離感だ。

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