悠久のシャングリラ


「……彼女の手を取って、目を閉じて……」


そして彼らの前に咲夢梨を連れてきて、
クイナは静かに告げる。


「そうすれば……、
全てを知ることが出来る」


面の奥では何を思っているのか、
誰も感じ取ることは出来なかった。


「この物語の本当の始まりを、全てーー」


少しの間の逡巡の後、
決意の顔に変わり、誰からともなく頷いた。

彼らはそれぞれに彼女の手を握った。

冷たく、氷のような……
真っ白で体温のない手を。

その体温を感じると同時に、
示し合わせたかのように彼らは目を閉じる。


……そして、夢へと誘われていく。


彼らが知る【終焉】から始まった、
彼女の悪夢の始まりへとーー。

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