悠久のシャングリラ


「まぁ、それが限界か。
初対面で飛ばしすぎたかなぁ……ははっ」

「まったく笑い事ではないです!」
……と言いかけた口を慌てて押さえる。

「なら、まず自己紹介からだな。
オレの名前は鈴蘭。
つっても本名じゃねぇから、仮な」

「……えっと、私は……」

「あ、そっちはいらないぜ。
知ってるから。 百合ちゃん、だろ?」

「……はい」


さっきの恥ずかしさがまだ残っていて、
返事がぎこちなくなってしまう。

顔も見れなくて、
俯き気味で会話を進めているこの状況。

気まずくなるのが嫌で、
私の方から話題を振ってみた。


「あ、あの……。
あそこに座っている男の子なんですが……」

「ん? ああ、睡蓮のことか。
……アイツ、本が好きなんだよなぁ」

「そうなんですか?」

「そうなんですよ。 あんな分厚い本
どこで見つけてきたんだか……」


呆れ気味にため息をついたあと、
鈴蘭は睡蓮(すいれん)へと近づいていく。

わざわざしゃがみこんで、
目線を合わせている。

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