悠久のシャングリラ
♡咲夢梨 side♡
私の記憶は、ただひたすらに虚無で、
寂しくて、悲しくて、そしてーー。
ただ一人、孤独だった時から始まる。
ぽつん……ぽつん……。
どこからか、
水滴が落ちる音が聞こえてくる。
それは私の鼓膜を揺らし、
眠っていた意識を浮上させていく。
「……?」
手も足も体も、感覚も。
何もかも曖昧な境界線の上に、闇の中に、
私はふわりと蝶のように漂っていた。
視覚も、聴覚も、触覚も、嗅覚も……。
何もかも役に立たない場所に、一人きり。
だんだんと状況を理解した私は、
胸の中の言い知れない焦りに目を見開いた。
限界まで開くことで、
見つけられなかった【誰か】がいると思ったからーー。