悠久のシャングリラ


「おーい、睡蓮。
ソファーにでも座ったらどうだ」

「…………」

「おい。 聞いてんのか?」

「…………」

「ダメだなこれ。 全然聞いてねぇし」


鈴蘭に近づくのは抵抗があったけど、
私も二人の方へと行ってみることにした。

そして、同じように呼びかけてみる。


「睡蓮、お尻痛くありませんか?
あのソファー快適で心地いいですよ」

「…………」

「向こう側の棚には、別の本もあります。
一緒に行ってみませんか?」

「…………」

「部屋の真ん中に行った方が
明るくて読みやすいですよ!」


そこまで言って、
ようやく睡蓮が顔を上げてくれた。

前髪の間から覗く、
苛立ちを含んだ瞳と目が合う。


「…あ、睡蓮。 気が付きましたか?」


けれど何故か彼が固まってしまって、
大きな瞳をさらに大きく見開いていた。

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