悠久のシャングリラ


……それは、薄々感じていた。



自分の生きる理由がほぼ皆無な今、
それも仕方がないと思ってしまう。


「なので、そのままの体を使い続けると、
【願い】を果たす前に消滅します」

「……消滅……」


ポツリと呟いた言葉に、
驚きの色はなかった。

どこかで予感していた、
まではいかなくても。

それに似たものがあったのかもしれない。


「ですから、肉体と精神を分け、
消滅を防ごうという理由(わけ)です」


「……そっか、私はーー……」


記憶が途切れてわからなかった霞の部分が、
この【人】のおかげで見えてきた。

いや、この【人】のせいで。
とでも言うべきか。


「ーーもう、死んでいるんだね」


言葉にすると、
その事実は重くのしかかってくる。


私の手が冷たいのも、
感覚が曖昧なのも、周りが闇なのも……。




全て全て、私が死んでいるからなのか。

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