悠久のシャングリラ


自分自身が、情けなくて、愚かで、
何も知らない子どもでーー。


……反吐が出る。


無意識に握りしめていた拳が、
鈍く痛みを訴えてくる。

見ると、手のひらの皮が、
爪で抉られ血が滲んでいたのだ。


「………」


隼人は自らの手のひらを見つめ、
それから眠っている咲夢梨に目を向けた。


「……クイナ。 もう一度、もう一度だけ、
咲夢梨と話すことはできないの?」

「ステンドグラスで囲われたシャングリラ
だったら無理だっただろうね」


つまり、【この場所】なら
不可能ではないということか。


さっきの部屋とこの部屋での違いは、
もしかしたら目視しただけではわからない、もっと深い部分にあるのかもしれなかった。

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