悠久のシャングリラ


「………そういえば………
二階に人影が………あった……かも?」

「おい! なんだよ、それ!
オレは聞いてねぇぞ!?」

「……今、初めて言った…から……」

「なら、確認のためにも、
さっそく全員で行ってみるとするか!」


藤が立ち上がり、
桜、鈴蘭、私、睡蓮とそれに続いた。

けれどーー。


「あたしは行かないわよ。
あんな化け物の巣……冗談じゃないわ」


桔梗だけが頑なに、
その場から動こうとしなかった。

きっと何を言っても、
また同じ会話の繰り返しになってしまう。

それがわかっているからこそ、
私も、そして二人も口を開けなかった。

けれど、
そんな事情を知らない鈴蘭はーー。

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