悠久のシャングリラ


ーーーそのとき。


「きゃあああっ!」


藤たちの壁をすり抜け、
一体が近くにいた桔梗に襲いかかった。


「桔梗!!」


頭で考えるより先に、体が動き出していた。

無我夢中で、
化け物と桔梗の間に割って入りーー。



両手を大きく広げ、睨みつけた。


「! ゆ、百合……!」


睨むなんてこんな化け物の前じゃ無意味。

拳銃を召喚して対峙した方がいい。

そんなことを、
私の頭が冷静に告げている。



……けれど、すべてはもう遅い。


「娘さん!」

「百合!」

「百合ちゃん!」

「百合!」




迫り来る鋭い爪。



それは私の喉元めがけて、振り下ろされる。



その時に来るであろう痛みが恐ろしくて、
私はきつく目を瞑った。

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