悠久のシャングリラ
第一章 記憶をなくした少年少女
目が覚めると、
そこは見知らぬ場所だった。
「ここは……?」
辺りを見渡して、
その異様さに初めて気がつく。
どこか怪しい雰囲気のお面が
壁一面に並べられている。
この薄暗い場所といい、
気味の悪いお面といい、普通ではない。
「……?
【普通】って、なんだっけ?」
普通が何か知っていたはずなのに、
この館のどこを見て普通じゃないと思ったのか。
どうして、薄暗くてお面が
並べられていると普通じゃないのか。
うまく説明ができなかった。
「きゃあああ!」
「!」
すぐ近くから、誰かの悲鳴が上がる。
反射的に顔を向けると……。
「!?」
その光景に目を疑った。
人の大きさを軽く超える大きさの化け物が、
女の人目掛けて襲いかかろうとしていたからだ。
(なに、あれ……。
黒い炎が揺らめいて見える……?)
その黒い炎の揺らめきは、
化け物を包むようにして広がっていた。