悠久のシャングリラ


(そんなことより、
あの人を助けないと!)



けれど、どうしたらいいのか。

気持ちが焦るばかりで、動けずにいると、
今度は男の人の声が響いた。


「娘さん! 頭を下げて、身を縮めて!
ーーはぁっ!」

「!」


手にしているの、刀だろうか。

その長い得物で、
化け物の身体を真っ二つに切り裂いていた。


「ふぅ……。 娘さん、怪我は?」

「い、いえ。 ……ないわ」

「そうか。 ならよかった。
そっちの娘さんも平気か?」


少し離れた位置にいる私にも声をかけてもらい、慌てて首を縦に振った。


「だ、大丈夫です!
……ありがとうございます」

「藤!
そっちは何か見つかった?」

「ああ、娘さんが二人いたぞ!
桜もこっちに来てくれ!」


どうやら助けてくれた人は、
藤(ふじ)というらしい。

その藤に呼ばれた桜(さくら)という男の人は、藤とは反対で、活発そうに見えた。

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