悠久のシャングリラ
「あたし、ずっと怖かったの。
初めて館で襲われた時の恐怖が、
全然消えてくれなくて……」
「でも!」そう意気込んで、
顔を上げた桔梗の瞳に迷いの色はない。
「百合があたしの前に飛び込んできて、
それでも動けない自分に苛立った。
強くなりたいって、そう思ったのよ!」
まくしたてるように早口で言う。
けれど私にだけはわかった。
彼女の手が、震えていることにーー。
桔梗も怖いのに、
それでも覚悟を決めてくれた。
その気持ちが痛いほど伝わってきたから。
「私からもお願いします!
私も強くなって、
みなさんのお役に立ちたいです!」
二人揃って、頭を下げる。
「あ、頭をあげてくれ!
そんなに必死にならなくても、
俺たちでよければいくらでも教えるぞ!」
「……ボクは、上手くない……けど、
百合の……お願いなら、教えてあげる……」
「そーそー。 オレだって、
手取り足取り教えてあげるし?」
「鈴蘭が言うといかがわしいんだけど」
「鳳仙に同意」
「オマエらひどいな!」
静まっていた部屋に、
賑やかさが戻ってくる。
私は桔梗と目を合わせ、
どちらからともなく笑い合った。