悠久のシャングリラ

欠片が見せる誰かとの出会い



「あ! 百合!」


部屋に戻ると、
桔梗が私に抱きついてきた。


「もう! どこ行ってたのよ!
急にいなくなって、
本当に心配したんだから!」

「ご、ごめんなさい。
珍しい扉を見つけて、つい……」

「今度から、
ちゃんとあたしに声をかけて!
ここには、あたし以外女がいないんだから!」


あたし、の部分をやけに強調し、
後ろにいる睡蓮を睨みつけていた。


「ありがとうございます、桔梗。
みなさんも、心配かけてすみません」

「いいよ、あんたが無事なら」

「ああ! だが今度からは、
ちゃんと声をかけてくれ」

「はい」

「それにしても羨ましいなぁ、おい!」


いつの間にか後ろにいた鈴蘭が、
本を読んでいた睡蓮の方を引き寄せた。

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