悠久のシャングリラ
「睡蓮も。 本当にごめんなさい」
「……うん、いいよ」
睡蓮は私に歩み寄ると、
優しく頭を撫でてくれる。
彼の手のひらは意外に大きくて、
ほんのり温かく安心できた。
「そ、それにしても!
なんで百合ちゃん、
違うとこに行こうとしてたんだ?」
私は二人にもわかるように、
できるだけ詳しく説明した。
「……女の、声……?」
「しかも前にも聞こえてたのか。
けど、オレらには聞こえなかったぜ?」
「……幻聴……?」
「私も初めはそう思ったんですけど……
今回は途切れ途切れでも
ハッキリ聞こえたんです!」
二人は顔を見合わせると。
「とりあえず、
藤のヤツ捕まえて部屋に戻るか」
欠片は見つかっていないけれど、
私が聞いた声について話し合うため、
まずは藤を探しにまた廊下を進んだ。
まだ少し空気中に漂っている、
甘い蜜の香りに背を向けてーー。