明け方のマリア
 同窓会の日、アユミは朝からファイルとデータ整理に追われ、会社を出た時には開始時刻を回っていた。

 タクシーを捕まえ、飛び乗る。

 そこで、ようやくシズカに連絡を入れた。

「あっ、ごめん。シズカ?」

「アユミイ。始まってるよ」

「ごめんね。今、仕事場から出たところなの」

「そうなんだ。でも大丈夫。まだ始まったばっかりだから」

「ここからだと、一時間も掛らないと思う」

 歩美は手首に填めた時計で確認する。バンドは白く、細い革で、時計自体もシンプルなものだ。高校の時に自分のお小遣いで買った安物だ。

「心配ないって。担任のフェブラリーがしゃべってるだけだから」

「ああ、柏木先生ね。そのあだ名、懐かしい」

 単に誕生日が2月だっていうだけなのだ。女子高生の間で先生の個人情報は、そのままアダ名になりえた。

「待ってる。早くおいでよ」

「うん、わかった」

 歩美が電話を切ろうとすると、向こうから呆気なく切断された。

 シズカにお酒が入っていることは、最初のひと言目から想像がついた。

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