明け方のマリア
(三) 硝子の鳥
 同窓会から何年かたった頃、アユミは雑誌の原稿を任されるまで成長していた。

 ようやく自分のしたい仕事になりつつあり、充実感のようなものが、得られるようになった。


 そんなある日、余りもののような雑誌の半ページを、急遽アユミが埋めなければならなくなった。

 押し付けられたかのようなページだが、アユミは人の気配が消えて静かになったオフィスでひとり、パソコンのモニターを覗き込み、キーボードを叩く。

 傍らのコーヒーカップから、温かい湯気が上がる。その脇には青いガラス細工がアユミの方を向いて、お行儀良く置かれていた。


 アユミは原稿を書き上げ、明け方になってようやく帰宅した。

 思ったより、アユミに疲労感はなかった。





 シズカとは同窓会以来、連絡を取り合っている。

 この前話した時は新婚だったが、今度は母になるそうだ。

 幸せかどうかは、彼女の声を聞けばわかる。

 彼女も忙しい人生を歩んでいた。

 だから連絡は携帯電話を使っているものの、お互い時間に融通のきくメールでやりとりをしている。

 内容が子育て一色になるのも時間の問題だ。


 今朝もシズカからメールが入っていた。

 アユミは必ず、返信してから眠った。


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