明け方のマリア
「ア、ユ、ミッ」
学校の休み時間、机に向かっていると、頭上から声がする。アユミはすぐ前の席に座っている親友のシズカに、話しかけられたのだ。
シズカは転校してきたアユミに、最初に声をかけたクラスメートだった。いきなり、次々と思い付いた話題を投げ掛けるシズカに、転校の不安感など、何処かへ吹き飛んでしまったのを憶えている。
そのシズカが、椅子に反対に跨り、背もたれに肘を付いて顔を近付けた。
「あら、シズカ」
「ねぇ、さっきのテストどうだった? 英語、得意でしょ?」
半笑いで、きれいに揃った歯をアユミに覘かせる。キラキラした小さな瞳が、わざわざ潜り込んでアユミを見上げる。キツイ天然パーマの入ったシズカの短髪が接近すると、日焼けした頭皮が所々透けて見えた。
「ああ、英単語のテストね。なんかね、一応、思っていた所が出たんだけど、頭ん中が飛んじゃって」
アユミはシャープペンシルを器用に指の上でくるくると回す。一転してその回転を掴み止めると、ペンの背で頭を掻いた。
一度記憶の引き出しにしまった単語が引っ掛かって、肝心な時に出てこなかった。いつもの事といえばそれまでだが、テスト日だというのに、特に酷かったような気がする。
「へへっ、あたしも」
「うふふふ。そうなんだ」
ガシガシと音を立てるほど、ペンの背を頭皮に擦り付けるアユミに、吹き出したシズカが自分の口元に手を添える。縦長に当てているため、鼻まで隠れていた。
学校の休み時間、机に向かっていると、頭上から声がする。アユミはすぐ前の席に座っている親友のシズカに、話しかけられたのだ。
シズカは転校してきたアユミに、最初に声をかけたクラスメートだった。いきなり、次々と思い付いた話題を投げ掛けるシズカに、転校の不安感など、何処かへ吹き飛んでしまったのを憶えている。
そのシズカが、椅子に反対に跨り、背もたれに肘を付いて顔を近付けた。
「あら、シズカ」
「ねぇ、さっきのテストどうだった? 英語、得意でしょ?」
半笑いで、きれいに揃った歯をアユミに覘かせる。キラキラした小さな瞳が、わざわざ潜り込んでアユミを見上げる。キツイ天然パーマの入ったシズカの短髪が接近すると、日焼けした頭皮が所々透けて見えた。
「ああ、英単語のテストね。なんかね、一応、思っていた所が出たんだけど、頭ん中が飛んじゃって」
アユミはシャープペンシルを器用に指の上でくるくると回す。一転してその回転を掴み止めると、ペンの背で頭を掻いた。
一度記憶の引き出しにしまった単語が引っ掛かって、肝心な時に出てこなかった。いつもの事といえばそれまでだが、テスト日だというのに、特に酷かったような気がする。
「へへっ、あたしも」
「うふふふ。そうなんだ」
ガシガシと音を立てるほど、ペンの背を頭皮に擦り付けるアユミに、吹き出したシズカが自分の口元に手を添える。縦長に当てているため、鼻まで隠れていた。