明け方のマリア
「ところでさ、アンタ何してんの? それ、もしかして噂の郵便倶楽部?」
いつの間にかシズカは身を乗り出している。そのシズカの手に下敷にされていた紙を、アユミが摘む。
「そうだけど、噂の……ってどういう意味よ」
「言ってみただけ。実際にやっているとこ、初めて見たから。でも、あたしには何て書いてあるか、さっぱり」
アユミに引っ張られて、シズカの手の下から抜ける。心なしか、紙がふやけているようにも見える。
「これはね、イギリスはロンドンに住む女の子からの手紙よ」
「そうなんだ」
シズカの掌のベタ付きで、ふやけてしまったと思われる箇所を、アユミが指先で直そうとするが、うまくいかない。
「中学生で習う英語ぐらいで、充分やっていけるよ。それで今は、その子に返事を書いてるの」
「アドレス聞いて、メールすればいいじゃない」
「ダメ。すぐそんなこと言うんだから。こうして相手の書いた文字の一つ一つを大切にするの。紙の臭い、インクの色、ほら、こんなタワミなんかもね。相手を想像したら、見えてくるような気がしない?」
アユミがグリグリと伸ばすと、余計にしわが広がるばかりか、表面からもろもろと剥げる。
「便利な世の中でも、アユミが敢えて大切にしたい気持ち、なんだか分かるような気がする」
「分かってくれるの?」
「勿論、親友じゃない」
指の動きを止めたアユミの目の前に、腕組みする親友がいる。
「ありがとう。でも、意外」
「むう」
シズカの腕組みした片方の肘が、空中でガクンと落ちた。
いつの間にかシズカは身を乗り出している。そのシズカの手に下敷にされていた紙を、アユミが摘む。
「そうだけど、噂の……ってどういう意味よ」
「言ってみただけ。実際にやっているとこ、初めて見たから。でも、あたしには何て書いてあるか、さっぱり」
アユミに引っ張られて、シズカの手の下から抜ける。心なしか、紙がふやけているようにも見える。
「これはね、イギリスはロンドンに住む女の子からの手紙よ」
「そうなんだ」
シズカの掌のベタ付きで、ふやけてしまったと思われる箇所を、アユミが指先で直そうとするが、うまくいかない。
「中学生で習う英語ぐらいで、充分やっていけるよ。それで今は、その子に返事を書いてるの」
「アドレス聞いて、メールすればいいじゃない」
「ダメ。すぐそんなこと言うんだから。こうして相手の書いた文字の一つ一つを大切にするの。紙の臭い、インクの色、ほら、こんなタワミなんかもね。相手を想像したら、見えてくるような気がしない?」
アユミがグリグリと伸ばすと、余計にしわが広がるばかりか、表面からもろもろと剥げる。
「便利な世の中でも、アユミが敢えて大切にしたい気持ち、なんだか分かるような気がする」
「分かってくれるの?」
「勿論、親友じゃない」
指の動きを止めたアユミの目の前に、腕組みする親友がいる。
「ありがとう。でも、意外」
「むう」
シズカの腕組みした片方の肘が、空中でガクンと落ちた。