明け方のマリア
アユミの学校では、マリアへの関心が再燃した。
それは、アユミの手のひらに佇む、たった一つの青いガラス細工の出現によって……。
休み時間になると、学年を超えて噂を聞きつけた生徒たちが、アユミの席までやって来て青い鳥を見たがった。
アユミは小さな透明袋に青い鳥を入れ、机に掛けた鞄に取り付け、ぶら下げた。
アユミが自習する傍らでも、わざわざ見に来た生徒たちが、物珍しそうに青い鳥を眺める。しかし、マリアの噂を知っている為か、気持ち悪がって袋の上からでさえも、触れようとする者はいなかった。
アユミは高校三年生であり、大学受験を控えていた。
希望する大学へ入るには、得意な英語に更に研きを掛ける必要があった。
吐く息も白くなった頃、学校でのマリアブームも遠に収まっていた。
アユミはその青いガラス細工をいつも側に置き、勉強に励んだ。
問題が思うように解けなくとも、透き通ったブルーが心を癒してくれた。
そして春が来て、アユミは大学生になった。
合格発表の確認には、青い鳥を持って、黙々と一人で行った。
自分の受験番号を見付けて志望の大学に合格したと分った時、周りを気にせず飛び跳ねて喜んだ。
辛いことも悲しいこともあった。しかし、こうして報われた実感が、やがて、ヒシヒシと胸の奥から込み上げてくる。
受験票を握りしめ、嬉しくて、嬉しくて、涙がポロポロと出た。その粒は今度はポタポタと地面に落ちる。
地面からは、古く大きな桜の木が、アユミの足元に優しい陰を作っていた。
一歩、その木陰の奥に入ると、緩やかで滑らかな風がアユミに注がれ、ハラハラと花びらが一枚、螺旋を描いて落ちてきた。
続いてもう一枚。また一枚。
アユミの黒い瞳に、そんな花びら達の舞が映る。
まるで、桜の花びらの一枚一枚が、アユミを祝福しているかのようだった。
それは、アユミの手のひらに佇む、たった一つの青いガラス細工の出現によって……。
休み時間になると、学年を超えて噂を聞きつけた生徒たちが、アユミの席までやって来て青い鳥を見たがった。
アユミは小さな透明袋に青い鳥を入れ、机に掛けた鞄に取り付け、ぶら下げた。
アユミが自習する傍らでも、わざわざ見に来た生徒たちが、物珍しそうに青い鳥を眺める。しかし、マリアの噂を知っている為か、気持ち悪がって袋の上からでさえも、触れようとする者はいなかった。
アユミは高校三年生であり、大学受験を控えていた。
希望する大学へ入るには、得意な英語に更に研きを掛ける必要があった。
吐く息も白くなった頃、学校でのマリアブームも遠に収まっていた。
アユミはその青いガラス細工をいつも側に置き、勉強に励んだ。
問題が思うように解けなくとも、透き通ったブルーが心を癒してくれた。
そして春が来て、アユミは大学生になった。
合格発表の確認には、青い鳥を持って、黙々と一人で行った。
自分の受験番号を見付けて志望の大学に合格したと分った時、周りを気にせず飛び跳ねて喜んだ。
辛いことも悲しいこともあった。しかし、こうして報われた実感が、やがて、ヒシヒシと胸の奥から込み上げてくる。
受験票を握りしめ、嬉しくて、嬉しくて、涙がポロポロと出た。その粒は今度はポタポタと地面に落ちる。
地面からは、古く大きな桜の木が、アユミの足元に優しい陰を作っていた。
一歩、その木陰の奥に入ると、緩やかで滑らかな風がアユミに注がれ、ハラハラと花びらが一枚、螺旋を描いて落ちてきた。
続いてもう一枚。また一枚。
アユミの黒い瞳に、そんな花びら達の舞が映る。
まるで、桜の花びらの一枚一枚が、アユミを祝福しているかのようだった。