【完】好きだという言葉の果てに

「付き合って欲しい」と言われたのは、彼女が甲斐さんにフラれたというウワサが、キャンパス中に広がってから多分、1ヶ月くらい後のことだった。


俺は、どこか思い詰めた表情に、少しだけ震えていた声に、以前から願っていた『守りたい』という想いが極まって、即OKしたんだと今ならそう思う。


付き合ってみて、彼女の気持ちがずっと甲斐さんに向いていて、甲斐さんへのあてつけに、敢えて俺を選んだことを悟っても、俺はそれでも良かった。

俺の前では、普通に笑ってくれるし、時々物思いに耽ってしまうことはあっても、ちゃんと俺の言葉に耳を傾けてくれるから。




やっぱり、俺はこの人が好きなんだ。


逢えば逢うほど、想いは募る。
でも、彼女の気持ちは大切にしたい。



交差する想い。
勝るのはいつも後者の方。

好きだからこそ、相手の全てを支配したいって奴もいるけれど。


俺は、彼女為ならどんなに辛い思いをしたとしても、彼女の傍にいて、彼女の笑顔だけでも守りたいと思うんだ。


それが、自分の気持ちを押し殺す形になっても。



彼女の願いは叶えてあげたい。



気紛れでも、こんな俺を選んでくれた、彼女の為に…。