【完】好きだという言葉の果てに
ぴたり。



強かった雨が、その瞬間だけ止んだ気がした。
それくらい、彼の笑顔が儚く美しかったから。





好きな人に、好きな人がいる。
それは、お互いに同じ筈なのに…。


どうしてこうも、彼は強くいられるんだろうか?
私なんて、未だに同じ場所をただぐるぐると巡り巡ってばかりで、こんなに苦しくて気が狂いそうなのに…。



そして。
周りの人達が、私達二人の事を…。
どれくらい酷く言っているか、知らない筈がないのに…。



ザァー…。



さっき感じた時とは大違い。
だって、雨は止まない。
私の心と同様に。
虚しさばかり降り注ぐだけの灰色の雨。
まだ、此処で見えない涙を零しているの。
幼い子供みたいに、駄々を捏ねて。





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