【完】好きだという言葉の果てに
いつから、なんだろう。
彼が私をちゃんと見なくなったのは。
私の「向こう側」に視線を移すようになったのは。
会話はきちんと成立してたし、手を繋いだり抱きしめ合ったりと、それなりの関係はあったのに。
…先に「好き」だと声を掛けてきたのは、彼の方だったのに。
勿論、良くないウワサも知っていたし、周りの子には散々止められていたけれど。
『月原さん、月原さん、俺と付き合おうよ』
ずっと好きだった人に、キラキラの笑顔で告白されて、その歌を歌うようなキレイな声に。
あの時、一瞬にして…撃たれてしまったんだ。
今思えば、一人思い上がっていたのかもしれない。
ただ声を掛けられただけなのに、自分でも気付かないくらい、期待していたのかもしれない。
そう思えば、お互いの埋められない温度差や、ちょっとしたスレ違いにも、納得がいく気がした。
全ての矛盾に頷ける気がしたんだ。
なんて、深くて…。
とても残酷な縁なんだろう。
これが『運命』なんだとしたら、あんまりだ。