呪蟲
罪喰らう
<2>

全く人間とは醜い生き物だ。

どうしてここまで悍ましいことができるのか。

K県警本部捜査第一課の強行犯次期指導官。

四十四歳。

刑事の滝沢晃は、顔をしかめていた。

その原因となるものは、人里離れた山奥の中で腐臭を放っていた。

滝沢は死体破棄現場で、その無惨にも変わり果てた死体を見下ろしていた。

殺害された場所は人が足を踏み入れないような、森の奥底だった。

第一発見者はこの山の管理を任されている老人だ。

大木の下から顔を覗かせる死体は、死後経過がかなり経ち、かなり腐敗が進んでいる。

犯人はどうやらこの女性と親密な関係にあったのだろう。

何百箇所にも刺し傷が見られる。

殺害場所は別な所で、殺害後ここに埋めにきたという所か。

その後、野性動物が女性の死体を掘り出し、後は−−。

「虫に喰われたわけか」

滝沢は手で口と鼻を抑え、目を細めた。

掘り出された若い女性にはうじ虫がたかり、この上なく気味が悪い。

回りには何十匹もの蝿がたかり、耳障りな羽音を立てている。
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