こいぞら。
えぴろーぐ。
「____ じゃあ、ね」
「おう、また連絡する」
拓海は少し寂しそうに、笑ってくれた。
「ミヨちゃああん!またねーーーー」
おばあちゃんが大きい声で手を振っている。『ミヨちゃん』は三つ編みの小さな女の子で、おばあちゃんの呼びかけに笑顔で手を振っていた。
「あの子、妹?」
「うん」
「なんで、隣なのにおばあちゃんめっちゃ名残惜しそうなのよ」
「...昔から体弱くて。あんまり、外出れないんだよな。だからオレが看病したりしてて」
「だから、拓海には会わなかったんだ...!!」
私は一つの謎が解けたような気がして、スッキリとした気分になった。
「ん、まあそうだな」
ブロロロロ、とエンジンがついた音がした。
「...じゃあ」
うん、と頷きかけて、拓海は気づいたように顔を上げた。
「あっ、優香!」
「んー?」
私は、もう走り出した車の窓から身を乗り出した。
「新学期からオレ、優香のいる高校通うことになったからーーー!」
「ええええええ!?!?」
お母さんも功太も、驚いて後ろを振り向いた。お父さんだけが、おい危ないだろう、と嘆いている。
「してやったり」
拓海は大きくピースサインを送って、空を指さした。
_____ もう、最後までふざけた奴だ。
空には、虹が広がっていた。
スマホがブブ、と鳴り、『優香が好きな天気だろ?女の子は絶対皆好きだね!自信あるねオレ!』と通知が来ていた。
私はその空を____ 拓海と2人で見つめながら___ 新学期がはじまるのを心待ちにした。
「だいすきだよ」
小さくそう、呟いて。