千日紅の咲く庭で
岳の言葉に、私は返す言葉を見つけることが出来なかった。

両手で押さえた唇は、まだ岳の唇の感触をはっきりと覚えている。

胸の鼓動は、まるで岳に聞こえてしまうんじゃないかって思えるほどに私の中を大きく鳴り響いている。


岳は、そんな私を頭からつま先まで視線を送ると、呆れたような盛大なため息をついた。

「俺は女には不自由してないけど、本当に好きな女としか結婚しないことにしたの。俺だってどうやったら恋愛が始まるのかって、悩んでいることだってあんだよ!!バカ花梨」


吐き捨てるように私に向けられた岳の言葉に、私はやっぱり返す言葉が見つからずにいた。

ううん、見つからなかったんじゃない。
岳のキスのせいで思考が停止してしまったのだ。


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