千日紅の咲く庭で
こうやって誰かに想われて、少しずつ少しずつだけど、その人のことを好きになっていけば。

そしたらきっと私の岳に対するこの好きって気持ちは忘れられる。


いつか、そうなればいい。



「さっ、杉浦さん、帰りましょう」

無邪気に喜ぶ東谷くんをぼんやりと眺めるように見ていたら、喜んだ勢いなのだろうか、東谷君は勢いよく私の手を握った。


言葉にならない声をあげて私は、東谷君の横顔を見つめた。

東谷君は私の顔を盗み見るようにして、私が嫌がってないことを確認すると安心したかのように白い歯を見せてにっかりと笑ってみせた。

でもその頬はやっぱり、ちょっとだけ頬を赤らんでいて。

東谷君はそんな顔を隠さずに、私の隣を並んで歩き出した。


東谷君の歩く速さは私の歩幅に合わせられ、ピタリと隣を歩く。
手の温度が二人とも同じ温度に溶けだした頃、東谷君は私の指に指を絡ませるように繋ぎ直された。


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