千日紅の咲く庭で
次第にぼやけて見えるつま先を眺める。

「花梨はさぁ、どうして昔からそんなにバカなんだ?」

やわらかな言葉が頭の上から降ってきて、ふんわりと暖かなものに包まれたと思ったら、岳に抱きしめられていた。


岳の温かさに包まれて、岳のにおいが私の中を駆け巡る。

「俺がいつ、花梨のこと嫌いって言った?」

岳の胸の中でそんなことを岳に尋ねられてしまったから、私は岳を突き放すよりも先にその質問の答えを見つけようと記憶を辿ってみるけれど、そういえば岳に嫌いって言われた記憶はない。


バカって言われた記憶なら指の数では足りないくらいあるのだけれど。

それよりも、私の頭は岳に抱きしめられているせいでさっきから若干フリーズしている。

「無反応ってことは、記憶がないってことだろう?」

私は岳の胸の中で小さく頷いた。

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