千日紅の咲く庭で
「花梨…」

「何?」

いつもより低くて色気を含んだ、甘ったるい声で岳が私を呼ぶ。

一輪だけ咲いた小さな紫色の千日紅を囲んで向かい合ってしゃがんでいる私たち。
岳の顔を見上げたら、互いの距離は思った以上に近くて、至近距離で見つめあう形になってしまった。


「俺が花梨のことずっと大事にするから」

「私も、ずっと岳の隣に居たい」


真っすぐに私に注がれる岳の視線。

私はその瞳に吸い寄せられるようにして、岳は私を射抜くようにして、どちらからともなく引き寄せられるように唇を重ねた。


季節外れの千日紅の咲く庭で、私たちは永久の愛を誓った。


FIN。
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