千日紅の咲く庭で
「花梨、俺、本当に小雪と…」
「うん。ちゃんと分かってるよ。岳の言う通りだよ。私、小雪ちゃんに嫉妬したの」

岳は小さく頷いた。

今なら言える。ちゃんと。

岳のまっすぐな視線に、私も真っすぐに視線をぶつける。

「岳、ごめんね。嫌な思いさせちゃった。私、小雪ちゃんが私の知らない岳のこと知っていることに嫉妬してた。」

繋がれた右手は、やっぱり岳の熱を感じていて暖かい。

岳は表情を崩して笑うと、手を繋いだまま私に背中を向けて歩き出す。

「いいよ、そんなこと。花梨になら嫉妬されるのも悪くないと思ったから」

そんなこと言われたら、何を言っていいのかすら分からなくなる。こんなに外は寒いっていうのに顔だけが一気に熱を帯びてくる。


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