千日紅の咲く庭で
「そこまで、好きって思ってくれているなら、もう喧嘩して家でなんてするなよ。心配する」

焦ったような声でそう言いながら岳が、私の手を急に引っ張って歩き出す。

「うん」

岳の背中に向かって、小さく呟いた私の手を今度は岳が強く握りしめた。


「それから、さっきの夢の話。もうちょっと待って。花梨にはちゃんと話したいって思っているから。もう少しだけ待って。」

ねぇ、岳。
岳の耳まで赤くなっていること気づいてる?

街灯に照らされた岳の耳は真っ赤になっている。私は返事の代わりにと握られた手に力をこめた。

「俺、結婚のことだって考えていないわけじゃないから。安心しろ」

呟くように言った岳に驚いて、岳の顔を廻り込んで覗き込むと、岳は顔じゅうが見たこともないほど真っ赤に染めていた。
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