千日紅の咲く庭で
「真っ赤だよ、岳」

本当は私だって照れ臭くてくすぐったくて、わざとおどけて見せた。
岳は恥ずかしそうに右手で口元を押さえる。

「見んなよ、バカ花梨。反則だぞ」

何が反則だって言うんだ。

歩道橋の階段を下りてしまうと、岳は私を睨みつける。

岳の照れた様子もそれを隠したがる様子も、なんだかおかしくって息を漏らしたように笑うと、岳は私の顎を急に持ち上げ唇を塞いだ。


唇で私の唇をこじ開けると、岳の舌は私の舌をあっさりと探し出し、絡めとった。

経っていられないほどの熱烈なキスに、思考回路が追い付かない。


「う、うぅん」

ふいに漏れ出てしまった声に、岳は満足そうに唇を離した。


「真っ赤だぞ、花梨」

そう言って顔を覗き込んだ岳の表情は意地悪な悪魔そのものだった。


「もう…」
頬を膨らませる私に岳は楽しそうな笑い声を挙げながら逃げるから、私もそんな岳を笑いながら追いかけたのだった。


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