千日紅の咲く庭で
「杉浦さん、僕が送りますよ。」

点滴が終わったのは、もう陽が落ちて辺りが暗くなった頃だった。

点滴を終えたら、なんとなく力が湧いてきた気がして、帰りは駅までの道のりを歩いた。


駅のホームで東谷くんにお礼を言って別れようと思っていたのに、東谷君は心配だからと我が家の最寄りの駅までついてきてくれる。


それどころか、家までちゃんと送り届けるとまで言いだした。

「本当に大丈夫だから、東谷くん」
「いえ、そういうわけには」

困ったように笑って頭をかきながら、東谷くんは私の隣に寄り添ってくれる。

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