千日紅の咲く庭で
「ねぇ、岳って、もうサッカーしないの?」

休憩のつもりで立ち寄った公園で、ベンチに座って持っていたミネラルウォーターを一気に喉に流し込んだ。
目の前でストレッチをしている岳は、私が尋ねた質問に視線を泳がせた。

「今、休憩中」

岳は少し困ったような顔して、苦笑いを浮かべる。


「どうして?」
「怪我。こじらせてるから」

そっぽを向いて、何事もなかったようにストレッチを続ける岳は、どこを怪我しているのかさえ私には全く見当もつかない。

そういえばさっきもダッシュして走ったりして、怪我なんてしている様子はなかった。



「そんなに走れるのに、変なの」

私のポロリと口から出た一言に、岳は聞こえないふりをしてストレッチを続けていた。

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