千日紅の咲く庭で
「どうした?」

私が急に立ち止って、暗闇に包まれる橋の下の河原の遊歩道を眺めていたからだろう。

岳は少し先を何度もダッシュを繰り返したいたはずなのに、いつの間にか隣にやってきて、私の顔を心配そうな顔して覗き込んだ。


「岳、私思い出したよ。」

「何を?こんな所で立ち止まるなんて、変な気起こしたんじゃないかって心配するじゃん」
小さく呟いた私に、岳が少しだけ怒ったように答えた。


「ほら、岳の彼女、小雪ちゃんだったっけ。いつだったかここで岳が小雪ちゃんと2人きりで喋っている所を見たことがあって、なんかちょっとやきもち妬いたことって思いだした」

「へぇ」

思いだしたくない過去なのか、岳にとっても中学時代のほろ苦い思い出なのか、私の言葉に岳の反応はあまりにそっけないものであった。

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