千日紅の咲く庭で
頬を膨らまして、ちょっと不機嫌になった私の隣を、岳はテクテク並んで歩いた。

橋から随分歩いたというのに、岳と私の間にいつものような会話は生まれない。

それどころか、2人の間にはなんとなく気まずい空気が流れていて、岳はさっきからもう何度もため息をついた。


「あのさ、花梨。今さら言い訳になるけどさ」

岳は私の機嫌を伺うような口調で、隣で口を開く。

「俺、花梨が小雪と俺が2人で河原で話しているのを見たって日、あの時は付き合ってなかったよ。」


「そんな昔のこと、よく覚えているね」


岳が小雪ちゃんのことを、呼び捨てするのを聞いて、過去の事だと分かっているのになんだか胸にチクリとした痛みが走って、私はわざとらしく投げやりな口調になってしまった。

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