愛欲
愛欲

存在

なんとなく生きてきた20年間。自分の存在理由なんて特に何もないと思ってた。特別可愛くもないし、何か才能があるわけでもない。二十年間通して彼氏がいなかったわけでもないけど、周りより恋愛経験も少なくて、それにコンプレックスを感じてたのは事実。だけど、家族がいて友達もいて普通に幸せだった。そう思おうとしてた。
私は今、空港にいる。何か新しいことがしたくて、二十歳の誕生日に一人で海外に行って来た。正直、行かなきゃ良かったって思ってるけど、それも経験だと割り切ったことにする。
一人海外は私に忍耐力をつけさせた。
なんとなくだけど、私はこれからの生活が何か変わる気がしてた。
理由はわからない。
荷物を受け取り、携帯に電源を入れた。特に誰かからの連絡があるわけではないけれど、やはり携帯は必需品。誰が一番に連絡くれるかな〜なんてクダラナイことを考えていたら携帯が鳴った。帰国後、一番乗りは…バイト先の室長だった。私は個人塾で講師をしてたということを思い出した。
「いきなり明日から勤務かぁ〜」
思わず独り言が飛び出した。「明日から勤務してほしい」という内容に少しうんざりもしたけど、今、一番私を頼りにしてくれてるのは間違いなくこの人だと私は思っていたし、海外では寂しいばかりだったので「わかりました(^-^)」と爽やかに返信をした。
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