愛欲
翌日、何かして気合いを入れたくて髪を巻いた。
珍しく髪型も決まり、気合いが入った。
絶対、負けちゃダメ。
私は先生。私は大人。
心に言い聞かせ、塾へ向かう。
塾にはいつものみんなの笑顔があってホッとした。やっぱり、ここは落ち着く。辺りを見回しても、浜野君の姿はない。まだ来ていないようだ。いつ来るのかと思うと緊張なのか、心拍数があがる。
(落ち着け…)
何度となく自分に言い聞かせた。
春期講習の授業を何コマかこなし、ドアに目を向けた。
浜野君だ。
待ち合いのソファに座る彼。
私の心臓も早くなる。休憩時間となり、浜野君の隣に座り込み、話しかけた。
「今日も部活?来るの遅かったねー」
浜野君が目を合わせないのがわかった。でも彼もそれなりに大人だった。
「うん。そう。疲れてやんなるぜ」
そう言って、いつもの笑顔になった。
私は心の底からホッとした。「これでいいんだ。」と言い聞かせ、授業に戻る。今日は浜野君の授業はない。肩の荷がおりた。
授業を終え、帰宅した。結局、浜野君と話したのはあれだけだったけど、我ながら頑張った。明日からも頑張ろう。そう思ったとき、携帯が鳴った。
鳴ると思わなかったから驚いたが、それだけじゃなかった。相手が浜野君だったのだ。
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