愛欲
ある日の学校帰り、私はいつものように地元の駅の改札を抜けた。その時、視界にチラリと学ランの男の子が立っていた。顔があまり見えなかったのに私は全神経で感じた…浜野君だと。慌てて振り返ると、やはり彼だった。一週間ぶりだ。隣りには、塾の生徒がいた。その子が私に気付いた。
「篠塚先生じゃん!今帰り?」
私は浜野君に話し掛けたかったが、私たちの関係はもちろん秘密だし、その子を無視するわけにもいかず答えた。
「そうだけど♪君達何してるの?」
その子は浜野君の顔を見て、ニヤッと笑った。
「おい〜健、お前、先生に会いたくてここに来たのかよ!!」
私はドキッとした。浜野君も会いたいと思ってくれてたんだ。私はあまりの嬉しさにニヤけそうだった。すると、浜野君は即座に「ちげーよ。オレは友達待ってんだよ。篠塚先生、早く帰れば?」なんて冷たく言ったけど、彼の耳が真っ赤だったから、私は足早にその場を去った。
その日の夜の電話で、「友達に会えたの?」って聞いたら「当たり前だろ!!」って言ってた。本当でも嘘でも、私はあなたに会えて本当に良かった。
その電話で、次の日、塾のあと一緒に帰ることを約束した。
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