花よ、気高く咲き誇れ
「同じ学部でもゼミは違うし、先崎さんを見ると一目散に飛んで行くぞ、葵のやつ」
「あんたの妄想を真に受けるほど馬鹿じゃないから」
そう言いながらも先崎千里という名が嫌に心にこびりついて不快だった。
そんな私を隆弘は頬杖をついたまま何か言いたげに見つめていたが結局、じゃあな、と私の心にしこりを残したまま立ち去ったのだ。
「…………本当だ」
「何が?」
小学時代からの友人である滝川綾香は柱からこっそり観察する私に冷たい目を送った。
綾香と隆弘は同じ学部。
というか、先崎千里と同じ学部だから知っているかもと頼んだら、あっさりと指さした。
敵は本能寺ではなく目の前にいた。
隆弘の言葉は事実なのだろう。
ならば、どんな女がタイプなのか知ってしかるべきだ。
そして隆弘の言葉通りの人物だった。
「私と真逆の人種に見えない?」
「そうね」
あっさりと冷たく返す親友にはもう慣れていたので、一人ぶつぶつとあーでもないこーでもないと敵を睨みつけながら模索した。