花よ、気高く咲き誇れ






 でも、宮原さんが好きなのは。


 この笑顔だと直感的にわかった。



「はじめまして。先崎千里です」



「……蓮井華です」



 自分と違う人種に、水谷君に好かれている彼女に、どうしても友好的になれなかった。


 彼女が悪いわけではないのに。


 そんな私の態度にも笑顔は途切れずに、私たちに手を小さく振って友達のところに駆けて行った。



「珍しい。というか、あんたが敵意をそのまんまぶつけるなんて初めて見たわ」



「……ね。ああいうタイプを好きな人が私を好きになるのって厳しい?」



「見た目の違いだけならともかく、私もハナも見た目も中身もキツいからね。中身も愛らしい先崎さんとは違うのは確かよ。性格美人の典型」



「だよね……」



 はぁ、と深いため息を吐くと、おなかがぎゅるると鳴った。


 敵と相対したことでエネルギーを消耗したらしい。



「で、宮原さんではないなら、何が原因で先崎さんを敵視するわけ?」



「綾香こそ、先崎さんと知り合いなんて一言も聞いたことないし」



「あんたが先崎さんに興味あるなんて30分前に初めて知ったから」



 学食のパスタを器用にフォークに巻き付け口に放り込む綾香。


 同じキツい容姿の持ち主でも綾香には男っぽさがない、まさに綺麗という形容詞がぴったりくるのが綾香だ。


 女にしか見えない時点で、まだ先崎さんに近い、私よりは。


 短く切りそろえた髪に化粧っ気のない顔にいつもジーンズの私。


 この格好が似合っているし、特別気にかけたことがないけど、もしかしてもしかしなくても、水谷君のタイプうんぬんの前にオシャレに彩られるこのキャンパスに不釣り合い?



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