花よ、気高く咲き誇れ
「あ、凪君!えっと、綾香ちゃんのお友達の……」
先崎さんはにっこり宮原さんに微笑み、私の名前を思い出そうと眉を寄せた。
「蓮井です」
「そっか、蓮井さん!ごめんなさい、今度はしっかり覚えたか……」
「千里、帰ろう」
宮原さんのこんな姿初めて見た。
いつも穏やかな人だと思っていたのに、水谷君を鋭く睨み付けて、その言葉に拒否さえ許されないようなピリピリした空気。
「え……私はまだ葵君と」
いつもと違う宮原さんに先崎さんは声をか細くした。
子ウサギが震える姿に私でさえ庇いたくなったけど、先に庇ったのは水谷君。
「千里は俺が送って行きますから」
いつものように爽やかな笑みを浮かべる水谷君。
でも、そこに悪意が込められているように感じた。
悪意を向けられた本人もそれに気付いたのか。
「必要ない。千里、帰るぞ」
強引に先崎さんの腕を掴もうとしたが空を切る。
「宮原さん。千里は今、俺と話しているんです。邪魔しないでくれませんか?」
「口の聞き方に気をつけろ。俺も千里も水谷の先輩だ」
もはや、一人の女を取り合う男同士の喧嘩だ。