花よ、気高く咲き誇れ






「あ、凪君!えっと、綾香ちゃんのお友達の……」



 先崎さんはにっこり宮原さんに微笑み、私の名前を思い出そうと眉を寄せた。



「蓮井です」



「そっか、蓮井さん!ごめんなさい、今度はしっかり覚えたか……」



「千里、帰ろう」



 宮原さんのこんな姿初めて見た。


 いつも穏やかな人だと思っていたのに、水谷君を鋭く睨み付けて、その言葉に拒否さえ許されないようなピリピリした空気。



「え……私はまだ葵君と」



 いつもと違う宮原さんに先崎さんは声をか細くした。


 子ウサギが震える姿に私でさえ庇いたくなったけど、先に庇ったのは水谷君。



「千里は俺が送って行きますから」



 いつものように爽やかな笑みを浮かべる水谷君。


 でも、そこに悪意が込められているように感じた。


 悪意を向けられた本人もそれに気付いたのか。



「必要ない。千里、帰るぞ」



 強引に先崎さんの腕を掴もうとしたが空を切る。



「宮原さん。千里は今、俺と話しているんです。邪魔しないでくれませんか?」



「口の聞き方に気をつけろ。俺も千里も水谷の先輩だ」



 もはや、一人の女を取り合う男同士の喧嘩だ。



< 22 / 105 >

この作品をシェア

pagetop