花よ、気高く咲き誇れ

夏風






 女度を上げるため、浴槽で美顔ローラーを転がしながら今日を振り返る。


 結局、昼ごはんさえ食べずに帰って来てしまった。


 二人はいとこ。


 先崎さんは宮原さんのことが好きで、相思相愛。


 でも、水谷君は先崎さんのことが好きなのだろう。


 そうでなければ、宮原さんを敵視する理由なんてないし、先崎さんに見せる表情は私に見せるものと違うはずはない。


 ショック。


 その言葉では片づけられない、胸糞悪さが残る。


 水谷君の知らない姿を見たことにだろうか?


 爽やかな涼しげな水谷君。


 でも、あの時の水谷君にはまったくそんな印象を抱かない。


 怯えて噛みつく犬?


 失礼だがそんな風に見えた。


 それで幻滅したかと言えば、答えはノー。


 むしろ、私にはさらけ出さない一面を先崎さんには見せるんだ。


 彼女は私の知らない水谷君を知っている。


 今さらになって、せつなくなって一気に力が抜ける。


 沈んでいく美顔ローラーが私の気分と一緒。


 こんなことで涙を零しているなんて、性格までどんどん女化している。


 自分を嫌いになっていく。


 先崎さんは良い人なのに、どうしたって心が強張ってしまう。


 どうしてこの人?


 そんな風に思ってしまう自分が醜くて嫌だ。


 自分が醜くなっていくのに先崎さんは私に気遣いを見せて、それが嫌だ。


 水谷君の全てを知りたい。


 彼の苦しみを理解したい。


 苦しみから解放させてあげたい。


 水谷君を好きだからこそ苦しいのに、やっぱり好きでいることをやめられない。


 私はどこまでも女なのだ。









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