花よ、気高く咲き誇れ
そんな私の姿を隆弘がどんな風に見ているかなんて知る由もないが、何の感動もない声で返す隆弘。
「そんなに好きなわけ?」
答えることなんかできない。
その言葉に頷けない。
頷いたら涙が溢れてしまう。
「……ったく、わかったよ。教えれば良いんだろ!?」
面倒くさそうに隆弘はベッドから下りた。
「あいつは昔からモテたぜ。それこそ、先輩からも。でも、あの笑顔でかわしてたな」
何を話せば良いのか吟味した後、隆弘はあぐらをかきながら話し始めた。
「女性に興味がない、ってこと?」
「いや。そういうわけじゃない。その当時付き合ってた女がいたし」
「…………どんな人?」
先崎さんなのだろうか、いや、大学で再会したって言っていたから違うか。
どんな女性と彼が付き合っていたのかは、知りたくないことでもあったし、知りたいことでもあった。
「知らねえ。あいつは何も言わなかった。けど、女がいた」
「言わないのにどうしてわかるのよ?」
肩すかしをくらったようで、隆弘を睨み付けるが、やつは肩をすくめる。
「そうだな。実際のところはわからねぇ。そもそも、あいつのことで話すことなんてないぞ。今の葵そのまんま。いや……」
眉間に皺を寄せた隆弘に無意識に顔を近づけてしまうが、鬱陶しそうに手で払われる。
それに、むっとしながらも話の本筋を逸らさないために堪えてみせた。
恋の力とは偉大である。
「何よ?」
「今の葵って初めて会った時の葵と全然違ってた。確か、高2の夏あたり?ちょうど今ぐらいの時期だ」
カーテンを揺らし流れ込んでくる風が夏の始まりを感じさせた。