花よ、気高く咲き誇れ
「今でも不思議なんだけど、あいつ、10離れている兄貴のこと目の敵にしててさ、その兄の結婚式がどうの、って言う理由であんな顔するなんて、変なんだよな」
「別に兄弟なんてそんなもんでしょう。何だかんだで、幸せを願っている、みたいな感じよ」
そこまで不思議がることではないと言ったら、隆弘はまぁ、そうだよな、と納得して続きを話し始める。
「で、何人かで葵とこに言ったらやっぱり塞ぎ込んで会えなくてさ。おばさんも、訳知り顔で葵に同情してるっぽくてな。とにかく、何があったのかは、わからず終い」
もやもやのままの話で、文句が出そうになったが、やっぱり隆弘にも話していないのかと妙に納得してしまった。
何かを抱え込んでる。
それを知っているのは身内。
家族内のごたごただろうか。
迷路にはまりそうな思考を断ち切り、目で続きを促す。
「停学が解けて学校に登校して来たら、また葵が変わっててさ。今度は、まぁ、良いほうに、ってことになるのかもしれないけど」
「何よ、その濁し方?」
「今の葵になったってこと。馬鹿なことをやったりしなくなって、それに勉強もスポーツもトップになったりしてさ」
「それは良い方に変わってるじゃない?」
「前はそこそこできるやつぐらいだった。手を抜いてたのかもしれねぇけど」
なるほど、隆弘が気に食わないわけがわかった。
手を抜いていたことが気に食わないのだ。
勉強はともかく、スポーツ馬鹿の隆弘はスポーツで手を抜かれたことが腹立たしいのだ。